青春の蒼いカケラ
二段階の講習を行った。ハルオちゃんはこの一ヶ月、ネットや雑誌で大々的に広告を打って、結構、順調に会員数を増やしているらしい。
「おいおい、こんなでたらめな買い方で大丈夫なのかよ」
「うん」
「本当にこれで?」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ってね」
「ごめん。もう一度詳しく教えてくれないか?」
「いいよ」
 僕は、ハルオちゃんが納得するまで丁寧に教えた。
 軸は何でも構わない。考えるのが面倒ならば、前日第一レースの一着と二着にでもすればいい。要は買い目の数が抑えられればいいのだ。あとはこれを百円から倍ずつ上げる。これが名付けて『なんとなく三連単』だ。必要なのはそこからどこに伸ばすか。これは直前オッズが判らない事にはどうする事も出来ない。
 僕は『ハルオちゃん、後は任せたからね』と言って、会社を出た。
 マンションに戻ると、ノリちゃんが『おかえりなさい』と言って迎えてくれる。
「遅かったのね」
「ちょっとした会合でね」
「なおちゃんが戻ってきたら相談しようと思って待ってたのよ」
「何を?」
「新婚旅行。どこにしようかなぁ、って」
「うーん……車椅子でも動ける範囲だから近場の方がいいのかな?」
「だったら熱海に行きたい!」
「じゃ銀水荘。予約しとかなきゃね」
 これで新婚旅行先も決まった。毎日わくわくしている。それはノリちゃんも一緒だ。
 結婚式まで、残り二ヶ月。
 下準備に余念がない。
 僕は翌朝、病院の予約があるので、今日は早めに薬を飲んで眠る事にした。


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