届かなかった手紙
2月14日
明日はついに2月14日。そろそろ席替えもあるし、これは渡さなきゃ!
・・・・友チョコとして。
そのときの私には、「告白」なんてハードなこと、できるはずなかった。
友達に渡したのと同じ中身。同じラッピング・・・。
それでも、かすかに気持ちが伝わっちゃう気がして怖かった。
そして、ついにその日がやってきた。
バレンタインという大きなイベントなだけあって、教室は甘い匂いと雰囲気でいっぱいだ。
いつもより大きな手提げを机に置いて、ちょっと勇気をだしてみる。
「相原、おはよッ♪」
「あぁ、おはよ。」
私の方をチラッと見て、また小説に目を向ける。その小説の内容を見ると、女の子の挿絵がある。
やっぱりか。
と思ったけど、あの時みたいに最悪、なんて思わなかった。
その時の私は、相原のどんなダメダメな所も愛しく思えていた。こんなに好きになっている自分がなんだか分からなくなる。
前はあんなに侮辱してたのに・・・。
小説家の立原正秋は、「恋愛は常に不意打ちの形をとる」と言った。
つまり
恋は全くもって、いつも予想外!
ということ。そう思うと、なんだか当たってる気がしてくる。
そして、帰りの学活で、相原に勝負を挑んだ。
「ちょっとカバン貸して?」
相原のカバンを、相原から手渡される・・・・。このことだけで失神しそうだ。
そして、カバンの中に頑張って作った(一部市販)チョコを入れる。
そして相原に返す。
小説を見たまま、相原の口が開く。
「ありがと。」
最大級の魔法で、私はついに自分のカバンに頭を沈めた。
こんな幸せ、感じたことない!
そして、その日の麻奈へのメールは、ノロケ話もどきで大盛り上がりだった。