届かなかった手紙
相原の隣になってから、5日目。
気づいたこと?
しいて言うならよくこける。
一日に一回はこけてると思う。
ドジで冴えなくて、しかもプチオタ・・・?
最悪じゃん。この人種。
そう、このときの私には、相原はどう見たって恋愛対象じゃなかったのだ。
恋愛対象という枠があるなら、枠外にもいないくらい。
そういう人は勝手に自分の道を生きていく。
そう思って、私は相原を空気だと考えていた。
だが、ある日の授業中。
「うわっ、消しゴム飛んできたっ!?」
静かな教室もお構いなしに叫ぶ相原。
バカ、空気よめ、KY。
しかも相原の手元を見ると私の消しゴム。
机の上にはあったはずの消しゴムがない。
うわ、関わっちゃったよ・・・。
めんどくさいけど、できるだけの笑顔で肩をつつく。
「ごめん、それ、私のだ。」
「あ、え?あぁ、びっくりした・・・・。なんか見えたから振り返ったら消しゴム飛んできてて、拾ったんだけど・・・」
聞いてもないのにブツブツと言い訳してる。
その時、ちょっと可愛いと思った自分は不覚だった。
まだブツブツ言ってるけど、とりあえず消しゴムを返してくれた。
「ありがと。」
ちょっとためらってしまう、感謝の言葉。
「ありがとう」だけにこんなに勇気を出したのは初めてだった。
そして手に変な汗をかく。
そして、私の中での相原のイメージは変わる。
「反応面白くて、案外いいヤツ、だよね?」
親友の麻奈にそれを告げる。
もちろん、麻奈は目をまん丸にしておどろいている。
そして首をかしげて
「ないわー。」
と真顔で言った。
「あるか、ないかじゃないよ!良いと思ってないから!」
必死で否定。
そう言えてたうちに、新しい恋でもすれば、よかったのにね。