届かなかった手紙
皆で先生に「さよなら」を言った後、
教室で、私と麻奈は残っていた。
「今日で2組にいられるのも最後かぁー。」
麻奈が教室の窓から
空を見上げながら言った。
「なんか卒業じゃないのに・・・、失うものがある気がするよね。」
「わかる!ウチらだけの教室だったのに、新入生が使っちゃうの。
なんか寂しくなるね。」
多分、ウチらの前にここの教室だった人達も
同じコトを考えてた。
友達とはしゃいだ教室の端っことか、
先生が必死で直してた掃除用具入れの金具とか。
見てたら鮮やかな思い出が溢れてくるものもあったけど・・・。
教室の窓際から二番目の列の一番後ろ。
そして、その隣の・・・・。
この角の二席は、今まで座ってた席の中で一番の思い出。
ふと、過去の自分と重なるように
おなじみの席に座った。
最後に座ってた席はここじゃなかったけど、
すごい心地よかった。
そして、座ったまま、隣をみた。
ここで、私は相原に恋した。
ここで、私は相原のカバンを受け取った。
ここで、私は相原にチョコをあげた。
ここで、私は相原と笑っていられた。
そんな懐かしく、甘い記憶にあおられて
私の頬には
夕焼け色に染まった
一粒の涙が流れていた。