届かなかった手紙

ホントの君

今まで、相原のことを見た目で拒否していた。顔がダメなやつは全部ダメ。そう思っていた。


でも、相原の隣になってから、その考えは少しずつ、少しずつ変わっていく。

隣に座っていると、いくつも優しさが見えてくる。

そして、隣の席になってから2週間たったころには、相原のことを「今までに見たことないくらい優しい人」と思うようになった。



「そんなにいい~?相原・・・。私には分かんないなぁ~。」


「いいとか、そんなんじゃないッ!!!」



放課後、いつもたまっている神社のブランコに座って話をする。これが恋バナをするときのルール。



「私は好きだと思う。」


「え・・・?誰が?」



「相原を、美央が。」




この子は何を言っているんだ・・・。と思う反面、図星で焦ってる自分がいたような気がする。


その話は延々と続き、すっかり暗くなった空を見ながら帰る。明日は相原に挨拶してみよう・・・。とか、こんなこと聞いてみようかな?とか、明日の相原への予定で頭はいっぱいだった。


暗い空で、薄気味悪い感じだった帰り道も、その日は楽しい道に思えた。


「ただいまー。」
「遅かったじゃない!」

心配してたのよ!と母さんが怒鳴ってきたけど、相原のことについて考えをまとめたくて、自分の部屋に逃げ込む。


ベッドに制服のままダイブして、熊のブーフのぬいぐるみを抱く。


さて、考えるぞ。


麻奈が言っていたことが頭をよぎる。




「私は好きだと思う。相原を、美央が。」




そんなこと・・・あるんだろうか?あんなブサイクで冴えなくて、たいしていいトコなくて・・・・。おまけに部活でやってるバスケだって、ちっとも上手くない。

そんなやつを、私が好きになる?そんなわけ・・・。

と、思うけど、ちょっと引っかかる。


興味ないのに、なんか相原のこと考えすぎじゃない?常に相原のこと、考えてるし。これ、おかしくない?ひょっとしたら、ひょっとするのかも。


あ、今も相原のこと考えてるし。


その日は一日中そんなことを考えていた。
そして、男友達に「相原、携帯持ってる?」と聞いた時点で、私の気持ちは確定した。


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