届かなかった手紙
「やっぱ私、相原だ・・・・。」
「・・・ですよね。」
学校へ向かう途中の道で暴露。予想通りの麻奈の反応。
道の端に立っている時計で時間を確認する。
8時10分。
それは、朝の学活が始まる時間。
「や、やば・・・・・。」
「ほらぁ、美央がトロトロしてるからッ!」
「私のせい!?」
全速力で走ったものの、ついに校門に入る直前にチャイムがなった。学活が終わるチャイムだ。
息が乱れて上手く喋れないので、二人とも黙っている。
「いっそのことゆっくり行っちゃお」と目で会話し、息を整えつつ、トボトボ歩く。
「はいはいはいー!遅い遅い!走れ、走れー!」
渡り廊下から先生が乗り出して叫んでいる。
もう走れない・・・。麻奈は下を向いてハァハァいってる。
「が、頑張る・・・?」
「頑張らない!」
即答。全くこの子は・・・。
「ほらほら、走れ!相原ァ~~~~!」
わ、私たちじゃなかった・・・。あ、相原・・・?
あ、あ、相原ッ!?
やっと頭が理解して、後ろをバッと振り替える。
そこには、今にもずっこけそうなくらいヨロヨロと走っている相原の姿。そんなに見ちゃいけないと分かっていても、目がその愛しい姿から離れない。
今日も会えたことに、ささいな喜びを感じる。
その時、昨日何度もイメトレした挨拶を思い出す。
「お、おは・・・。」
隣にいる麻奈にさえ聞こえないくらい小さな声で呟いた。あぁ、美央、バカ。
「おー、お前もかよッ!」
横を通り過ぎていく相原が言った一言。
その一言で、私は何も言えなくなってしまった。
長めのうっとうしそうな髪をモサモサと揺らしながら渡り廊下を走り抜けていった。
「はは、目がハートですよ。美央さん。」
「うっさい。余韻にひたってるんだ。」
相原の一言は魔法。もうないと思っていたパワーがみなぎってくる。
「麻奈、走ろッ!」
「えぇ~~~~!!」
幸せな日々の始まりの日。
この時の幸せな気持ちは、一生忘れない。