ちぐはぐ遠距離恋愛



奈緒美に加え、依弥と舞まであたしの周りにより耳を寄せる。



「……た」



恥じらいしかないあたし。
顔を赤くし、口を手で覆って呟く。



「は?聞こえない」



奈緒美があたしの口を塞いでいた手を剥がす。



「…諒…太…」



顔から火がでるくらい熱くて……。

言い終わったあたしはいつかの奈緒美のように机にグダーと倒れ込む。



この学校に、諒太なんて一人しかいないからまるわかりだ…。



「村野…?」



舞があたしから遠ざかる。



「ちょっと……なんで避けるわけ?」

「あ…ごめん」


あたしが顔をあげると同時に舞が椅子と体を戻す。



そしてまたあたしは机に突っ伏せた。



「何で〜!いつから?!」



いつからって……。



そんなの、



「ずっと…前からだよ」

「いついつ?」

「……10年前……」



その言葉を聞いた奈緒美は椅子から立ち上がった。



「すごっ!!」

「こら…!立ち上がらないの!」



舞があたしの代わりに奈緒美を落ち着かせる。



「あんたたちって…幼なじみ?」




ズキ…ッ




何気ない依弥の言葉。
……ココロが締め付けられる。




「う…ん」




あたしは、諒太を好きになってから五年間はこの言葉を苦手としてきた。



「いいなぁ…幼なじみ」

「よくない!!」



思わず体ごと机から引きはがす。



「幼なじみなんて…全然よくないもん!」



そしてまた、体を机に任せて廊下の声を聞いた。




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