ちぐはぐ遠距離恋愛
一人部屋にこもり、重々しくペンを走らせる。
『ごめん、遥菜。あたし行けないや…。
お金ないし、二人で約束したなら二人で言っておいで?』
書き終わったら、どっと疲れが押し寄せた。
(諒太とゲーセン……か)
別に強がっているつもりなんかない。
ただ、
二人の仲の良いところを見たくないだけ。
二人が一緒にいるところを見たくないだけ。
(あたし…弱いな)
これじゃあ逃げているだけなのに…。
ペンたてにペンを戻す。
視線を左に移したとき、一枚の写真が視界を横切った。
思わず二度見してしまった。
小学四年生のときの写真。
みんなで持っているのは小さい一輪のチューリップ。
優香子、あたし、諒太、あたしの弟、日向[ひむか]……。
いつも一緒にいた五人だった。
仲町小学校……。
それがあたしたちの大切な母校。
ただ、合併することになりこの年で閉鎖。
終了式で撮ったのがこの写真。
あたしの弟、凌[りょう]と諒太と日向はお互い大好きで。
毎日遊びまわっていた。
いつもあたしの家にくる諒太。
目的はもちろん凌で、あたしなんかじゃないけれど……。
それでも会えることが嬉しくてしょうがなかった。
だけど、仲町小修了とともに、三人が遊ぶことは減ってしまった。
幼なじみといっても家はあまり近くない。
ちょうど学区域が割れてしまい、あたしたち兄弟だけが違う小学校へ…。
それが、
運命を変えてしまったのかもしれないのに…