ちぐはぐ遠距離恋愛
拳にしていた指を広げていく。
一度パッと限界まで開いて閉じて……
また開いた。
安心しきったような先輩をまた睨む。
そして、
パンっっ!!!!
開ききったその右手で先輩の頬を叩いた。
「いっ…!!」
「甘いですね、先輩」
スッキリしたあたしの笑みに肩を動かす先輩。
「油断は大敵ですよ?これに懲りてもうついて来たりするのはやめてくださいね?」
それだけ伝えて、舞の腕を引き教室に入った。
バンっ!と音をたてて扉を閉めて。
「ま、まっしー…凄すぎる」
教室に入った瞬間、舞が呟いた。
「だって、超しつこいんだもん」
正直悪いことしたとは思ってない。
先輩が悪いんだよ。うん。
まぁ手加減はしたしね。
「大野!!」
「えっ?」
後ろのドアからぞろぞろと男子が入ってきた。
「お前、強すぎる!」
「え?」
「あのコウ先輩を静めさせられるなんて…!」
「サッカー部に入れよ!お前なら部活でもやっていける!」
「はぁ?馬鹿言うなよ。あたしもう部活入ってるし…。それに先輩とこれ以上一緒にいたら身が持たん。無理」
あたしの言葉に「えぇ…」 と肩を落とす男子。