ちぐはぐ遠距離恋愛
恋愛と武道と友情と
こくは、く……。
そう分かった瞬間、あたしの熱は顔に集合した。
どんな反応すればいいのか分からない。
あたふたしだすあたしは、視界に映った村野にしがみついた。
「ちょっと、どうすればいいの?」
「知るかよっ!」
「だってこんなの初めてで…」
「自分で考えろ」
そういった村野はあたしに何もせずに体を榊原君の方に向けた。
目を合わせられない自分が何だか信じられなくて……
「先輩の今の気持ちを聞きたいです」
「あたしは……」
あたしは、村野をもう好きじゃない。
もちろん高杉先輩にだって何も感じない。
だから、要するに……
「好きでは、ない。……かな」
バッグが肩から落ちないように手で支えながら首を傾けた。
さすがに真顔では言えなくて、少し笑いながら。
「ほかに、いますか?」
「ううん。それも違うよ?あたしは今好きな人はいない」
それを聞いた榊原君はホッとしたように息を吐いた。
そんな姿を見て、あたしも傷つけずにすんだと安心する。
「良かった。じゃあ村野先輩とも、高杉先輩とも当分は付き合いませんよね?」
「えっ?あ、まぁ…」
「そしたら俺にもチャンスはあるんだ。―――先輩!」
いきなり呼ばれてあたしは背筋を伸ばす。
近づく榊原君に目をつぶりながら村野の腕を掴んで握った。