ちぐはぐ遠距離恋愛



大野は、先輩を見ていない……。

それは、たぶん俺さえも―――きっと、目に入ってないってことで………



俺は上を見上げる。

今日はいつも以上に誰かを、目で追っている気がした。

優しく、微笑むその顔は、俺が見たことないもの。

心臓が、キュッと握られる。





大野の目線を追って、たどり着いたのは―――







村野だっから…………








村野がシュートを入れると、パアッと笑顔が咲き

村野がふざけて遊ぶと、苦笑いをして、

村野が女子の先輩と話す度に、




すごく切ない顔になる……






名残惜しげに静かに窓を閉めた大野に、俺は動けずにいた。




(あいつは………村野が、好き―――か)

どこかで、いつかは覚悟しなきゃいけないとは思っていた。

大野がいくら男っぽいからって、あんなにたくさんの可愛い表情をするのは女子である証拠。

だから、あいつも恋をするんだ―――って、思っていた。

コウ先輩が切ない顔になる度に、俺も同じく胸を締め付けられる。

もちろん大野が切ない顔をすれば、俺達の気分はフツフツと煮えたぎる。


村野は、この部で唯一の女子である福富先輩に話し掛けていた。

そんな村野を睨みつける。



(……ふざけんなよ)




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