ちぐはぐ遠距離恋愛
そしてたぶん、
大野は村野を想ってる。
それもそんじょそこらの恋とは違う。
何年も何年もかけてきたような――深い深いもの。
それは、大野の視線からでも伝わる。
当の本人たちはたぶん気づいていないが。
だけど、
俺が入れるような隙間なんて一ミリもない。
大野の純粋な純粋な気持ちには勝てる気がしなかったし、
やっぱり、大野が幸せになれるほうがいい。
あいつの笑顔がいつでも見えて、あんな切ない顔をもう見ることがなくなるなら、そっちのほうが全然いい。
村野には運動神経も、かっこよさでも勝てなかった。
こうして恋愛まで譲ることになるってことは、
結局どこまで行っても俺はあいつを超すことはできないみたいだ。
清々しい青い空に、雲が一つだけぽつんと浮かんでいる。
でもそれはゆっくり動き出した。
なんだか、俺みたいな感じがしてずっと眺めていた。
だから、この時は思ってもなかった。
そんなぎしぎしの空間に、
俺達が入ってしまえることなんて――――
〜鎌瀬side〜 END