ちぐはぐ遠距離恋愛
一人だけ小さいから分かりやすいし、一年生に混じっていてもわからない。
体育の授業はぶっちぎりだし、バスケなんかスリーポイントから軽々しくボールを投げる。
気づいたら、ただ眺めて行動にフッと笑えるだけじゃ済まなくなってた。
大野先輩に話しかける男全てにイライラする。
何だか分からなくなる自分。
英語室に行くために二年生の教室の前を通った時は目を疑った。
先輩に後ろから覆いかぶさる男。
噂に聞く、高杉先輩だった。
大野先輩は高杉先輩に攻撃をしかけて土下座させる。
「いい加減にしてください!嫌いになりますよ?」
「すいませんでした!欲望に勝てなくて…」
「アホかっ!!」
吐き捨てるように言った大野先輩。
それを見て笑う周りのギャラリー。
正直、高杉先輩はうらやましい存在だった。
大野先輩と知り合いで、
あんなに簡単に話せて、
触れることができて…。
まずは高杉先輩を蹴散らすはずだったけど…、
気づいたことがあった。
大野先輩が見ているのは、高杉先輩でも、もちろん俺なんかでもなく―――
村野諒太先輩だった。
村野先輩は一年でも大人気だ。
背も高くて運動神経抜群で。
問題児として見られているところもあるけど、男の俺から見てもかっこいい……。