ちぐはぐ遠距離恋愛
第五章

不安材料




(真白 回想)
―――――入学式初日



「真白ちゃんおいで!」

「あ…」


智春さんの声が聞こえた。

一人桜の木をぼんやり眺めていたあたし。
ハッと気づいて振り向く。


「ほら、久しぶりの写真だよー」


『平成二十◯年 第八十◯回 入学式』と書かれた立て看板。

その前には本当に久しぶりと思わせる面子が立っていた。

親友の由花子、元クラスメートの日向。
そして幼なじみ兼あたしの想い人である諒太……。

みんなとは時々会っていたものの、やっぱりこう全員が揃うのは本当に久々だった。

だからかあたしは少し胸を弾ませながら駆け寄る。

由花子の隣は諒太だったけど、あたしの気持ちを知っている由花子はニヤリと笑いながら間に入れてくれた。

会っていたとはいえ顔を合わせるだけだったから一・二年は話していない。

二の腕が触れ合う度に熱が篭る。


「じゃあ取るよー」


由花子のお母さんの掛け声にあたしは前を向くけど…どうも昔から写真は苦手。

表情を作ることはできない。


「こら真白!笑いなさい」
「こら諒太!笑いなさい」


母さんと智春さんの声が被った。


「「面白くもねぇのに笑えないっつーの」」


と、あたしと諒太の声もハモる。

(やっぱり、こう言うと思った)


クスリと微笑みながらチラリと諒太を見た。



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