ちぐはぐ遠距離恋愛
イライラしてきたあたし。
そんな自分を落ち着かせたのは……紛れもなく海来ちゃん。
「あの二人、付き合ってんだってさー!!!」
「な…にそ、れ…」
男子は羨ましそうに上を見上げる。
そこには青い空が広がっている。
それに引き換えあたしは目を見開いて丸くして、苦笑いをするしかない。
目の前は、真っ暗。
光りもなにも広がってはいない。
「それ…本当…?」
「さぁ、噂だけどね」
“うわさ”の三文字は少しだけあたしの氷を溶かすけど…。
冷や汗が背中を伝っていく。
「噂……」
「あれ、大野どうした?」
フラフラしだす体で廊下に出た。
(何それ……初耳なんですけど?)
今日初めて聞いた、噂だった。
もちろん、信じてはいない。
信じたくもない。
それでも頭は働かなくて、元気になる術もなくて。
どうしようもなかった。
「なんで……彼女なんか…」
学校はその話題で持ち切りで、顔も見たこともないくせにファンだと言い張る女子に質問攻めをうけた。
そんなの、
あたしが一番知りたいのに―――!!!!
結局、家に帰っても何も落ち着かない。
ただただ、あたしの頭を支配する“八重島さん”。