ちぐはぐ遠距離恋愛



ロッカー室の窓からは、ちょうど校門が見下ろせる。

あたしが覗いて見ると、生活委員会が朝の挨拶運動をしていた。

眠たそうに登校してきた高杉先輩を発見。

あたしにはもちろん気づかず、校舎の中へと進んで行った。

そして、榊原くんが数人の男子と登校。

校舎側から何人かの男子が駆け寄っていく。

多分、当選したことを知らせにいったんだろう。

それらしいことを聞いた榊原くんは、少しだけ嬉しそうな顔をちらつかせ、上を見上げた。


「えっ…」


あたしに、気づいたようだ。

フッと微笑まれる。

その仕種が、村野にそっくりだった。

榊原くんとは、約束をしていた。

『先輩、俺が当選したら祝ってくださいね』

その約束を思い出す。


(後で行かなきゃな)


あたしは榊原くんに、そういう意味も込めて微笑み返すと、

目を丸くして、直ぐに俯いて校舎の中へスタスタ行ってしまった。


(何あれ……)


あたしも眉間に皺を寄せて、また校門に目を向ける。



あたしの学校はそう大きくはない道路(通り)に面していて、駅への道にもなっているためにそこは車の通りも多い。

そんな中、一台の黒い車が止まった。

残念なことに車のメーカーとかどうでもいいあたしには分からないが、
そういうのに詳しい生徒はいるわけで、それを見たとたん口をあんぐり開けだす。


(ってことは結構高級車なんじゃないか?)


でもあたしの予想が当たったのかは置いといて、

校門を村野がくぐり抜けた。



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