ちぐはぐ遠距離恋愛



前に立ち、フッと笑みを浮かべる村野。

それに妙にムカついて、あたしは村野を睨んだ。


「何?」


(どうせ、可愛い彼女の弁解でもしにきたんでしょ?)


内心、そう思いながらあたしは尋ねた。


でも……


「ごめん、大野」


開いた口から聞こえたのは、あまりにも唐突すぎる言葉で……

あたしは目を丸くした。


「…なん…で」

「何でって、悪いことしたからだろ?」

「村野が、謝るなんて…」

「んだよ、おかしいか?」


顔を逸らされて、あいつの表情がよく見えなくなってしまった。

だからかあたしは…
どうしようもなく、切なくなった。

(何か言わなきゃ)

そう思ってあたしは村野を見直す。


だけど、


「……………」


何も言えなかった…。

だって、顔を逸らした村野は


八重島を見ていたんだから――――




(何で、何でだろう……)

あいつはあたしのただの幼なじみのはずなのに、

何でこんな苦しい気持ちになるんだろう。


どうしてあたしだけが、こんな思いにならなきゃいけないの?

しかも結局、村野は……八重島さんのために―――




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