ちぐはぐ遠距離恋愛



負とも言える思いが、体中を駆け抜ける。


どうでもいい……
そう思えるはずだった。

だけどあたしは、まだダメだった。

自由には、



なれていなかったんだ…





「もう…知らない」


小さい声で言ったのは、あたし自身に語りかけたからかもしれない。

でも、村野にも意味がある。


「勝手にすればいいじゃない…」

「大野?」

「嫌い……」



何もかも、

村野も、八重島も、
こんな世界も、
こんな自分も、
こんな気持ちも…


(全部、全部…っ)



「嫌いだよ!!」



村野を思い切り押し倒してあたしは後ろに逃げ込んだ。

向かうは階段、

上った先は屋上。



重苦しい鉄のドアを開いたら、



望むような自由が広がっていた。


涼しい風がふわりと包み込む。



「っ……」



ダメになる。




あたしが、


あたしじゃなくなりそうで、





怖かった――――





フェンスから外を見る。


遠くにビル群が見えた。

空は青い。
雲一つない。

下をみた。

芝生が広がる中庭が目につく。


(青に映えそうだな……)


空と緑を見比べながら、

下を見つづけた。




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