ちぐはぐ遠距離恋愛



自分自身のことなのに、わけがわからなかった。


ここから身を投げ出したら……?


って、そんなことまで考えていた。



「……あっ」



隣にいた蝶が、フワリと飛び立った。

無性に、見過ごせなかった。


あたしはそれを追いかけるように手を伸ばした。


その時―――――




「真白ちゃん!!!」




聞き慣れた声が、あたしの耳を貫いた。

びっくりして、柵から思わず離れる。


「…先輩…」


息を切らした先輩はあたしへと駆け付けた。

近づく先輩に、少し身を放す。


「なん「何してんだ!!」


大声があたしを制圧した。

耳を塞ぐ。


「死んだりするなよ…」


悲しい声で、目で、あたしを包み込む。

気が抜けた次の瞬間には、先輩の腕の中だった。


「頼むから…」

「……先輩?」


あまりにもギュッと包み込むもんだから、恐怖感なんてこれっぽっちも感じなかった。

久しぶりの優しさに、心はスッと落ち着く。


「あいつのことで、死んだりするな」

「え…」


あいつのこと――?

それが村野だと気づくまでにはすこし時間がかかったが、あたしはちゃんと理解した。

ていうかさっきから、


この人何か誤解してる気がする………。






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