ちぐはぐ遠距離恋愛
花が咲いたようで、周りが明るくなった。
「あ、今部室開けるね!」
副部長でもある葵先輩は手慣れた様子で鍵を回した。
ガチャリと音を立て、扉は開いた。
木管楽器に使うリードの匂いがほんわりと漂う。
「あと二時間もあるよ〜」
実奈先輩は時計を見て嫌々声を出した。
部活が終わるのはあと二時間後だということ。
「しかも今日は雨か……」
「嘘、雨っ?!」
実奈先輩の言葉に、あたしは振り向いて窓に駆け寄った。
水滴が窓の外側にいくつもいくつもついている。
さっきまでは降ってなかったのに、もう結構な量になっていた。
(傘、持ってきてないのに…)
確かに朝から曇り空だったけど、雨は降らないだろうと傘も持たずに家を出てきたあたし。
はぁーとため息をつく。
雨の日は余計にやる気がなくなるんだ。