ちぐはぐ遠距離恋愛
ようやく落ちついて、あたしたちは楽器に口をつけた、
けど………
「低…っ」
冷え込んできたせいか、楽器の音も低い。
あたしはチューニングをしようとまたドアの近くによった。
列が途切れるのを待っていた時……
「あ、大野!」
一際明るい声が聞こえた。
見なくてもわかる自信はなくて、
あたしは視線を床から上げた。
そこには満面の笑みの鎌瀬が。
「鎌瀬、何?」
「それ、大野が吹くのか?」
鎌瀬は興味津々にあたしの楽器をまじまじと見る。
「妹と同じだな」
鎌瀬の言葉に、あたしは反応した。
「妹もいんの?!」
びっくりした調子のあたしに対し、あっちはお気楽だ。
「そーだけど。そんなに驚くか?」
鎌瀬の言葉にあたしは頷いて見せた。
「あたしさ、弟とは会ったんだけど…妹も黒い?」
「は?」
ウキウキしながら聞くが、鎌瀬は眉間に皺を寄せた。
「黒くはないけど…弟って、浩祐?」
「そう鎌瀬くん!空手で一緒なんだ」
「ああ…って…大野空手やってんの?!」
「そう、だけど?」
首を傾げるあたしだが鎌瀬は妙に納得したように笑った。
「どーりで強いわけか」
「何それ…」
そんなくだらない会話を繰り返していると、後ろから山内達も走ってきた。