ちぐはぐ遠距離恋愛
あたしは我を忘れて、足を止めた。
そして村野の方を向き、腕を掴む。
「…………だ」
「大野…?」
全てを動かしたのは、今の言葉だった。
あたしのわがままも、
消えない―――忘れられないこの想いも…。
全部、全部………
「…めてよ……っ」
「おい、何だよ大野」
これのせいだ。
「やだ…って……いってるじゃん!」
見上げて訴えた。
びっくりして体を反らした村野。
だけれどあたしは気にせず喋り続ける。
「そうだよ、元はと言えばあんだが悪いんじゃん!」
「は?」
「勝手に前に進んで、勝手に成長して…っ」
「お前何言っ「大野って言われたのが、どれだけ辛かったか知らねーくせに!!」
村野はちんぷんかんぷんな様子で、
ただ豪雨の中必死にあたしの声を聞き取ろうとしていた。
「呼んでよ……」
「は?」
「ちゃんと呼んでよ……っ」
「何て?」
顔を伏せたあたしに、村野は顔を近づける。
もう、
諦めよう。
信じてしまおう。
あたしは、絶対無理なんだ。
この数ヶ月で、よく分かった。
あいつがモテることも、
あたしが男らしすぎることも、
あいつがあたしに興味がないということも。
それでもそれでも、
一番よく分かったのは、
「前みたいに真白って…呼んでよ!」
あたしがとても小心者もので、
諒太が大好きで仕方がなくて、
この気持ちは忘れられないってことだったんだ……