ちぐはぐ遠距離恋愛
あたしは息を切らし、そっぽを向いたまま。
村野の視線を感じて、動けなかった。
「………何で?」
「………」
第一声に、何も言えない。
だって、何て言えばいいの?
『あんたのことが好きだからだよ』
とか
『呼んでほしいから…』
とか?
(ムリムリムリ!!!)
ハッと気づいた。
この後、どうすりゃいいんだ?!
あたしは恐る恐る村野を見上げる。
「…え…う……あの、き、気にしないでいいから」
(あーっ!!勇気が水の泡……)
「気にしなくていいのか?」
あたしが自分の失敗に頭を抱えていたとき、
村野が優しく言った。
「えっ」
「別に俺はいいけど…『真白』でも」
「はっ?」
村野の言葉はたいしたことのないように放たれた。
(な…なんだって?)
「じ、じゃあ何でいきなり…」
「雰囲気?」
「ふ……っ?!」
一気に熱が冷めていく。
改めて、あたしはこんなやつに振り回されていたのか!
と思った。
とにもかくにも、
自分が恥ずかしい。
あたしは村野をドンと押し込んだ。
「…っ……バイバイ!!」
最後は顔も見ず、あたしはまた重苦しいバッグと共に雨の中へと走り出した。