ちぐはぐ遠距離恋愛




『村野には、負けないから』


記憶からひょっこり現れた先輩。

あたしを、初めて好きだと言ってくれた人……。


『あいつなんかに、真白ちゃんは渡さない』


本当に、

ずっと、あたしを想っていてくれたんだ…。


あたしを必要としてくれてる…。



『早く俺を好きになれよ』




それなのに、



結局、あたしは先輩を傷つけることになってしまった―――。


好きになれなかった。

あんなにお世話になったのに。



あたしの中には、いつまでもあいつがいた。

見えなくなったときは、ただ隠れていただけで……。



だけど先輩は、今でも期待を持っている。

あたしがそんなに先輩振り回すのなら、

終わらせなければいけない。


もう一度、



(想いを伝えよう―――)







そう決心してから、

数日後の日曜日。


「真白ちゃん!」


先輩が手を振って迎えてくれた。


「お待たせしました」


あたしは駆け寄り先輩の隣に並ぶ。

先輩はいつもどおりの笑顔で、車道側にたち、歩き始めた。

それからはたわいのない話をした。

目的地についても、二人で全種類のスイーツを制覇すると目標をたてた。


そんな、楽しい時間は、




泡のようにすぐ消えてしまったんだ――――





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