ちぐはぐ遠距離恋愛
諒太はあたしをベッドに降ろそうと、膝を曲げた。
(やだ…)
だけど欲張りなあたしは諒太から手を話さない。
「大野?」
眉を寄せる諒太。
(あたしは…何を困らせているんだ…)
「あ…ゲホッ…ごめ…」
咳をしながら謝るあたしは諒太から手を離す。
だけど――。
「寝ないほうがいい?」
「ひゃ…」
諒太が膝を戻した反動であたしは離していた手を戻す。
「このほうが…楽なのか?」
あたしは思わず吸入機を落としそうになった。
(な…な…何を)
耳でこだまする言葉。
『このほうが…楽なのか?』
“このほうが"って、
この体制のことだよね?
あたしが今、諒太にされていることは、
(紛れもなく、お姫様抱っこ………!!)
考えただけで顔から火が出そうだった。
慌てて首を横に振る。
「…ん」
諒太はゆっくり優しくベッドに戻した。