ちぐはぐ遠距離恋愛
季節は確実に冬に向かっている。
あたしの恋も、そろそろ終盤だ。
歩きながら言える自信が無くて、その場に立ち止まった。
そんな余裕、持ち合わせていない…。
「ねぇ諒太」
「何?」
「もしも…」
口に出した言葉は、あたしのわがままな期待。
『もしも』なんて、あるわけがないのに――
「あたしが告白したら、付き合ってくれる?」
「…………」
口を閉じてしまった彼に、あたしも開いた口をキュッと結んだ。
(やっぱり、ダメか)
前で組んでいた手を握る。
隠した期待が込められた質問タイムはあっけなく終わった。
後は自分の本当の気持ちを素直に伝えるだけ。
「あたしは………諒太がまだ好きだよ」
狭くなった喉の奥が、ピリピリと痛い。
苦い後味が口一杯に広がる。
勝手に終わらせられた恋を、今度はあたしの手でどうにかさせたかった。
あの時はあたしの気持ちも、想いも、全て伝わっていなかった。
「海来…」
今でも『海来』と呼んでいてくれることだけで嬉しかった。
それが、転校してきてからの誇りだった。
嫌な顔一つせず、あたしに構ってくれる優しさは温かさを感じながらも苦しかった。
「ゴメン…」
待ち構えていた三文字は、一秒もかからない内に全身に伝わる。
我慢していたものを突き抜けて、それを合図したように涙が落ちた。
「もう海来は好きじゃない」
片手で目を擦って、前を向いた。
「うん。分かってたよ」
あたしの言葉にフッと笑った彼。
(好きになって良かった)って思う。
彼を好きになって、春が二回ほど訪れた。
全部が全部、思い出になる。