ちぐはぐ遠距離恋愛
人を愛することがどれだけ幸せなことなのかが分かった。
人に愛されることがどれだけ嬉しいのかも分かった。
「あたしを好きになってくれて、ありがとう」
「何言ってんだよ」
あたしの大好きな顔で、彼はそう言う。
目の前で一歩だけ彼が近づいた。
「海来」
降り注ぐ声に、勢いよく顔を上げた。
「俺を好きになって、良かったか?」
その質問は、世界一の愚問だと思う。
あなたを好きになって嫌だったことは、あの電話だけ。
「…んなの…当たり前じゃない」
(ねぇ諒太……)
あたし、笑顔で言えてたかな??
「そうか…」
手を触れることなんてなかったけど、彼の優しさと温もりをしっかり感じた。
これが、最後――――
「そうだ諒太」
あたしはふと思い出した。
(言い忘れるとこだった…)
「ちゃんと諒太も告りなよ?」
これがあたしが今できる精一杯の強がり。
貴方への精一杯の愛の証……。
それなのに彼は――――
「は?」
って言ったんだ。
「別に隠さなくてもいいよ!分かってるもん」
めちゃくちゃ明るい声で言ったんだけれど、あたしの思いは通じてないらしい。
眉間に皺を寄せて怪訝な顔をする彼。
「何のことだよ」
「だから、諒太の好きな人のことっ!」
「俺は別にいないけど…」
耳を疑う言葉。
それでも今まで付き合ってたのだからこれだけは言える。
嘘をついてる顔じゃない……ってことが。
「もしかして、気づいてないの?」
「気づくもなにも…「諒太、大丈夫?」