ちぐはぐ遠距離恋愛
〜諒太 side〜
気づいたら隣にいた。
それが当たり前になっていた。
出会いは俺にとっては思い出しにくいほど前だ。
だけど、俺から名前を呼んだことはよく覚えている。
『おーの、まし…ろちゃん?』
平がなを読めるようになって、初めて名前を呼んだ。
それはもう出会ってから二年以上経っていたけれど。
『そうだよー、りょたくん』
絵本から顔を上げて笑いかけてくれたあいつ。
『違うよ?りょたじゃなくて、りょうただよ?』
『りょう…た?』
首を傾げるその姿。
他よりも一段と小さいお前はまるで子犬みたいだった。
しかし、
弟がいるのに加えて俺や兄貴と一緒に育ち、いつしかノリさんと武道まで始めた結果、
あいつの周りには男ばかりになっていた。
だからか、そんな子犬のような姿は保育園を卒園したきりあまり見なくなった。
ゲームだってお手の物だし、
スポーツ万能だからサッカーだってすぐに出来た。
言葉遣いや行動は、ほとんど俺らと変わらない。
特別な目で見るということは知らなかった。
小学校だって規模が小さかったし、俺は純粋に純粋に生きてきた。
でもそれは――――
『お前って、真白ちゃんが好きなんだろ?』
兄貴が純粋じゃなく思春期というものを覚えるまでの話だ。