ちぐはぐ遠距離恋愛
誰かが、俺達の関係を知って言った言葉。
『“幼なじみ"なんて、ただの飾り付けの言葉だよ』
それを聞いたあいつは、異様なほど否定した。
俺は口には出さなかったが、自分だって内心動揺していた。
(あいつが幼なじみじゃなかったら……?)
そう考えると、目の前の明かりがフッと消える。
それほど、大事な存在だった―――
そして俺は、本当にあいつが好きになっていた。
男らしいのに時々見せる笑顔。
あんなの、誰にも見せたくなかった。
ずっと傍にいてほしい、
俺の隣にいてほしい。
そう思い続けたが、現実は甘くなかった。
統廃合による学校の変更。
俺達の家に空いた向かいの道路という少しの距離が、引き離す。
それからは顔も見合わせなくなった。
向こうの学校は、年上の世界を知ってる人が多くそっからつるみだして迷惑をかけまくった。
今だってそんなに変わんない。
ふざけて遊んで窓ガラス割ったりするし、ゲーセンにたまっていて怒られたりしている。
唯一変わったのは、俺達の縮まらない距離だった。
手を伸ばせばすぐに触れられた。
それでも、何か大事なことには近づけなかった。
まるで遠距離恋愛をしてるみたいだった。
でも俺達は、近くにいるのにどこか遠い存在というニュアンス。
――――本来の意味とはだいぶ違う。
そして中学生になってからは、
手も触れられぬようにまでなった。
広げたのは俺自身。
意図的なことではなかったが、気づいたらもう遅かった。