ちぐはぐ遠距離恋愛
『お前もサッカーやんのか?ウチの部に入れよ!一生忘れられねぇゲームさせてやっから』
帰り道に公園で適当にボールを弄っていた俺にそう声をかけたのはコウ先輩だった。
『真白ちゃんは俺なんか見てねぇんだよな』
俺の前であいつの頬にキスとかしたくせに、
ある日そう俺を見て呟いた。
あいつを好きになった男は結構いたが、誰もあんなふうに積極的じゃなかった。
特に、あんなにあいつ“自身”を好きになったやつなんか見たことがなかった。
みんな、容姿や外見で判断しているやつが多いなかで……
コウ先輩は本気であいつの中身を見出だし愛してやっていた。
そんな先輩まで、
俺にあいつを預けたのか??
「あいつが辛いときに、楽にしてやれたのは村野、お前だけだった」
鎌瀬がいつのことを言っているのかは分からなかったが、
それを聞いて心臓が深く脈を刻んだのは確かだ。
「お前が幸せにしてやらなくて、他に誰があいつを幸せにしてやれんだよ!!」
鎌瀬が真剣に口にする。
海来も震えた唇を隠すように開いた。
「諒太……思い出してよ」
一度なくした気持ちは、もう手前まで探しあてた。
あとは俺の勇気だけでどうにでもなる位置にいる。
「真白ちゃんが、好きなんでしょ??」
今までの時間が止まっていた気がした。
それが急に動き出す。
ぽっかりと空いた隙間が回復したようで、俺の心は満たされた。
〜諒太 side〜 END