ちぐはぐ遠距離恋愛
『何で何で?』
「でもさ、ちょっと聞いてよ」
『ん?』
「あたしさ、村野はたぶんあたしから言われるの嫌だと思うんだよね?」
『は?』
受話器から耳を離したのはあまりに声が大きかったから。
あたしはスピーカーモードにして喋り続ける。
「こんなこと言いたくないけど、村野がもしも本当にあたしを想ってるとしたらさ、あいつのことだから変なプライドが許さないと思う」
『何を?』
「あたしから告白するのが」
その言葉に彩夏は吹き出したように笑い出す。
『何それ〜!相変わらずめんどくさい男ー!』
ごもっともな意見にはなにも言えず、咳ばらいをして姿勢を直した。
「だからね、あいつが告って来るのを待つ」
『えぇ?!』
あたしは窓を開けて外を見た。
『何でよ!それじゃあ告白するって言わない!』
「別に告白されたときにあたしも言えばよくない?」
『うっ……でもつまんないー』
彩夏の意見はとりあえず今回は無視。
あたしはもうすっかり裸になった木を見上げている。
「いいの、それで」
『じゃあ、告られなかったら?それじゃあこの前と何も変わんなくない?』
「告られなかったら…そりゃああたしから言う」
『えっ!』
これにはまた興味を持ったようで、あたしはまた微笑んだ。
街頭がつきはじめた。
時刻はまだ五時前だというのに……
(冬か……)
『それいいね!』
「よくないだろ!それにそんときは手紙かなんかだと思うよ」
『はぁ?』
「将ちゃんでも伝えてもらうわ」
『何それ!ダメだよ』
「いいんだってば!そこでもう賭けは終了なんだから」
『賭け……?』
彩夏の声が静まり、あたしはもっと窓から顔を出しながら頷く。
そう、これはあたしの中での賭け…