ちぐはぐ遠距離恋愛
あいつが告白してくれるなら、あたしだって想いを伝えて。
あいつが告白しなかったら、あたしは小さく自分の想いを搾り取って伝える。
…………あいつの中で、すぐに処理してもらえるように。
この想い、全部伝えよう――――そうは思えない。
そんなことはできない。
できれば、あの人の中ですぐに消えてほしい。
じゃなければ、取り返しがつかいくらいに……
距離が広がるから………。
だからあたしは、小さく小さく折りたたんだ二、三行程度だけで十分。
それでも、やっぱり少しだけあいつに知ってほしい。
………あたしを好きになってくれた人のために。
どうしてこんなことになるのだろう、
そう思う。
優果子とも八年一緒だけど、日を追うごとに――時間が経つとともに距離が縮まる。
それなのに、あいつとは離れるばかり。
世界は不平等。
このままじゃ、永遠に遠距離恋愛だ。
「でも、想いを伝えてくれるんならいいや」
彩夏の声が聞こえて、あたしは肩を震わせた。
だって
受話器からの声なんかじゃなかったから。
振り向くと、そこにはあたしと電話でつながったはずの人がドアに寄り掛かっていた。
「彩夏……」
「気づかないのもどうかと思うんだけど……強引な態度取ってごめんね?」
彩夏は持っていたビニール袋を少しだけ上げた。
「あたしの奢り!コンビニのケーキ〜!」
プチッと通話を切り、彩夏の元へ。
「さいこ〜!!!」
壁に立てかけたミニテーブルを引っ張りだし、その後は楽しい時間を過ごした。