ちぐはぐ遠距離恋愛



榊原くんはこの光景を目にして顔を白くする。

優香子はあたしを見てプッと笑った。

それもそのはず。
校門のど真ん中で右には葵先輩。左には高杉先輩。後ろからは奈緒美がくっついている状態なのだから。

生活委員も、他に登校してきた生徒も唖然と立ち止まって見てくる。


「ず、ずりぃー!!」


そして予想したとおり、榊原くんは前から突進しあたしに抱き着いた。


「……!!!!」


さすがに、これはヤバい。


「お、さすが真白先輩、暖かい」


あたしは四方八方を塞がれている。

何も見えず、ただイライラが募っていく。

しかもみんなあたしより背が高い。


「……ちょっと…」

「「「「はい?」」」」

「いいか「そろそろ離れろよ」


あたしの声に被さって、別の声が聞こえた。


(この声は………)


とたん、榊原くんがベリッと剥がされる。

やっと視界が開けて、榊原くんを掴んでいたのは……



「村野…」



不機嫌さが醸し出てる村野。



「お、諒太!おは「…………」



そして無言でまたもや高杉先輩を剥がす。

あたしの周りはだいぶすっきりした。


「あ、これ以上いたら怒られちゃいそうだね…」

「え?」

「じゃ、バイバイ真白ちゃん」


葵先輩も笑顔で離れ校舎の中へ。

残るは奈緒美だけ………



「で、お前はいつまで抱き着くんだ?」


あたしは体に回っている腕を強く握る。

そうして飛び跳ねて離れた奈緒美。


これで、世界は広がった。




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