ちぐはぐ遠距離恋愛
頭だけじゃなく体も固まる。
半開きになった口にも気にせず、あたしは瞬きさえ忘れていた。
「……どういうこと?」
「は?」
素っ頓狂な声が聞こえたがそんなのはどうでもいい。
『真白に隣にいてほしい』
それの意味がわからない。
言葉が足りない。
「…幼なじみで……いろってこと?」
(あ、言ってみると泣けてきた)
潤む涙腺を隠すように俯く。
あたしはこれからも幼なじみとして存在する。
それは賭けに負けたということだ。
まぁ何も賭けていたわけではないけど…。
「は?お前さぁ、馬鹿?」
すごく上から言われたのにはさすがにカチンときた。
顔を上げて、拳を作る。
「馬鹿じゃなっ……」
そう言って反論しだす、――その瞬間。
あたしはふわりとした匂いに包まれた。
十何年間も感じてきたその優しい香り。
落ち着かさせるのにはもってのこいのもの。
背中には片腕が周り、
体全体には温もり……。
「…………っ?!」
目を見開いて、あたしは背筋を伸ばす。
状況を理解するのには、なにもかもが充分に揃っていた。
「幼なじみなんかじゃなくて、……あれだよ」
「………あれ?」
「ってか、この体制から判断してくれ…っ」
急に焦ったような声を出しはじめて、喋らなくなる。
仕方なくあたしは、一人頭の中で整理した。
(幼なじみじゃないのに隣にいる。
この体制は……抱きしめられてい…)
「わぁ…っ!!!」
抱きしめられていると気づいて、飛び上がるように身を反らした。
心臓はバクバク言い続けている。
「………分かった?」
「えっ、あ…も、もうちょっと待って…」
片手でストップをかけながら、もう一度落ち着いて考えた。
(幼なじみでもないのに、だ、抱きしめられているっていうことは…)
つまり、つまりそれは―――
「…………好き?」