ちぐはぐ遠距離恋愛



「……あ…ぁ」


口元を手で押さえた彼の顔は心なしか赤い。

曖昧にそう答えて、あたしから目を逸らした。


(…諒太…が、好き?)


「えっ、好きってあたしのこと?」

「はい?」

「村野は、海来ちゃんが好きなんじゃ…」


そしてあたしの頭の中はパニックだった。
いろんな言葉がグルングルンと頭中を駆け巡る。

クリスマスツリーは色彩豊かにあたしたちを明るく照らした。

諒太の体も、赤く染まる。


「ほん…と?」

「嘘言ってどうすんだよ」

「あたしを騙してけなす」

「しねぇよ………んなこと」

「え、じゃあなに?本気?」

「何回言わすんだよ!」

「…あ、だから…顔赤いんだ」

「はっ?赤くねぇ!」

「だって耳とか真っ「それはあれだ」


諒太はツリーを恥ずかしそうに見た。


「イルミネーションのせいだ」


まるで幼い子供のような表情は、こんがらがった糸を解いていく。

まだ完全に理解はしてないが、なんだか、どうでもよくなった。


「ふっ…じゃあ帰ろうか。みんな待ってるから」

「おい待て」


笑みをも零してそう言ったのに、彼はあたしの腕を引いて止めた。


「お前の気持ちはどーなんだよ」

「は?」

「俺だけに言わせんのか」

「………あ」


思い出して言葉を漏らすあたしにため息をついて睨む。

避けたくとも避けれない。
『蛇に睨まれた蛙』とはまさにこういうことなのだと実感した。

諒太に向き直して背筋をもう一回伸ばす。

首が痛くなるくらい上を向いて、あたしは口を開いた。


「…あたしも…好き。……です………」


言い終わったあとは顔から火が出るくらいの衝撃だった。

告白というものを知り、改めて高杉先輩たちを尊敬する。

諒太は諒太で、フッと口角をあげて笑った。
その顔は…昔の面影残る表情なのに、どこか違って。
優しくて甘くて、柔らかくて――溶けそうなくらいのものだったことは一生忘れないだろう。




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