ちぐはぐ遠距離恋愛
心臓はバクバクいって鳴りやまない。
奈緒美の抱き着く腕を持っていつでも逃げられるようにしていた。
「真白!」
そんなとき、目の前に彩夏が飛び出す。
あたしは顔を輝かせ、奈緒美から抜け出し彩夏に駆け寄った。
「話あるから、ちょっと来て」
「えっ?」
「優香子も!」
二人の腕を引っ張って、階段を駆け降りた。
踊り場で止まり息を整える。
決して『二人の関係は内緒にしておく』と決まったわけじゃないが、そのほうが身のためになりそうだし…あたしたちはそういうことにすることにした。
だが、あのまんまじゃ何を言われるか分かったもんじゃない。
正直彩夏たちの登場には頭が上がらないほどだった。
奈緒美といただけじゃ抜け出せなかっただろう。
「話って何?」
その言葉にハッとあたしは顔を上げる。
(…そうだった…)
あたしはこの二人には本当のことを言うつもりでここに呼んだのだ。
不思議そうな顔をするいつもの面子を見て心が和らいだ。
「あのさ…急な話になんだけど……」
それしかまだ言っていないのに、目の前の表情は華やかになる。
たぶん予測はできているんだろう。
そうなれば話は早いし、とてもありがたい。
「む…あ、諒太とは…まぁ。どうにかなりました」
「「本当?!」」
彩夏はあたしの手を握った。
冷えた手に温もりが戻る。
「やったねー!どっちから告ったのー?」
「えっ、あ…っちから、かな…」
「キャー!すごい!」
(……え………)
振り向けば奈緒美と舞、依弥の姿が移った。
盗み聞きをしていたようで、この三人の目もキラキラしている。