ちぐはぐ遠距離恋愛



外に出てみれば真っ暗だった。

先輩が引退し、副部長となったあたしは部長の子と残っていた。
顧問との話し合いで、もう六時半を回っている。


「じゃあ、こっちだから。バイバイ真白!」

「うん。明日ね」


校門を出たところですぐわかれる。

一人で坂を下り、一つ目の角を曲がった時だった

人影が見えて、あたしは歩みを止める。

今日は満月。
かぐや姫を思い出させる幻想的な夜だ。

そんな明るすぎる光に照らされて映し出されたのは、ネックウォーマーに鼻から下をうめた諒太だった。


「なんで……どうしたの?」


少しだけ見える顔。
長い時間ここにいたのか、赤くなっている。

身震いを一度した後、あたしの隣に並んで歩きだした。


「ちょ……っ!質問に答えろよ!」

「うるせぇ。お前おせぇんだよ」


その言葉で、あたしは歩みを早め諒太の前に立ち塞がった。


「もしかして、…………待ってくれてたの?」


これは心の隅にあったほんのわずかな考え。
偶然は世界には存在しないというが、少なくともあたしは信じていた。
―――“奇跡”というものに置き換えて。



小さく首は縦に動いた。

あたしは目を見開く。


「馬鹿じゃないの?!こんな寒い中で…風邪引いたらどうすんの!」

「ひかねぇ」

「わかんないじゃんそんなの!もうっ、早く帰るよ!」


真相を知ったあたしは無意識に諒太の手をとって早めに歩く。


もう、逃がさない―――――


そう深く心に刻みながら。


いつのまにか隣に並んだ諒太。

背が足りなさすぎて、横を向いても腕しか見えなかった。

今にも触れ合いそうなほど近い距離。



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