ちぐはぐ遠距離恋愛
「ふっ…ぅ……っ」
涙が止まらなかった。
だけどどうしようもないそんな暗闇のなかで、
あいつを諦めることで泣くんじゃないってことは分かった。
あたしは、
悔しくて……。
「…っ」
悔しくて、悔しくて……。
「ヒッ……」
数日前でもいいから、戻りたくなった……。
『このほうが…楽なのか?』
『そうだよ』って言えば良かった。
あの温かさは、
もう感じられない―――。
ピリリリっ――――
ポケットの中で携帯が震えた。
あたしは決定ボタンを押して、すぐに耳に当てた。
『もしも「彩夏ぁ…っ」
『真白?』
「………いよ」
『え?聞こえないよ』
「素直…に…なりた…っ」
泣き出すあたしに彩夏は受話器の向こうでオロオロしだす。
『真白?どうしたの?』
「…っく……もうムリ」
『村野と何かあったの?』
あたしはこくこくと頷く。
「女じゃ、なくなっちゃったよ…彩夏」
『へっ?』
「男に…なっちゃった…」
ついに、諒太の前でも男になってしまった。
それも、ほぼ完璧な――
「ダメみたい…」
「言わないで?真白」
「諦めなきゃ、ダメみたいなんだ…ッ」
「真白………」