ちぐはぐ遠距離恋愛



将ちゃんを送り終えてあたしは教室がある階へと戻る。

下を向きながら階段をヨタヨタと上った。


目的の階への最後の階段を上っているとき、上から声が聞こえた。



「ほんと、何やってんの」





「え……?」






顔を上げると、手すりに体を預けた諒太が目の前にいた。



「……っ、――きゃあっ!」



驚いたあたしは、後ろに体重をかけすぎたみたい。



(ヤバい……!!)




「お前っ!」


そんな小さい言葉とともに、諒太のガッシリとした腕があたしを掴んだ。




そのまま引き上げ、あたしはさっきの体制に戻った。




(何で…っ)




触れられた腕が熱をもっていく。




「お前なぁ…」




諒太が声をかけた。




「その筋肉で女らしい声出すな」

「な゙!!!」




まるで獣を見たかのように言った。

体中に鳥肌が立つ。

フッと薄く笑って諒太はあたしに背を向けた。




「兄貴、今フリーだから」




って、最後に言いながら。





(誤解、されてない?)





一人残されたあたし。



チャイムが鳴り響いてようやく足を動かした。

教室に戻っても、頭と胸にモヤモヤがうごめき続ける。




(将ちゃん…フリー…なんだ)




って、(違う違う…!)





< 59 / 420 >

この作品をシェア

pagetop