ちぐはぐ遠距離恋愛
将ちゃんを送り終えてあたしは教室がある階へと戻る。
下を向きながら階段をヨタヨタと上った。
目的の階への最後の階段を上っているとき、上から声が聞こえた。
「ほんと、何やってんの」
「え……?」
顔を上げると、手すりに体を預けた諒太が目の前にいた。
「……っ、――きゃあっ!」
驚いたあたしは、後ろに体重をかけすぎたみたい。
(ヤバい……!!)
「お前っ!」
そんな小さい言葉とともに、諒太のガッシリとした腕があたしを掴んだ。
そのまま引き上げ、あたしはさっきの体制に戻った。
(何で…っ)
触れられた腕が熱をもっていく。
「お前なぁ…」
諒太が声をかけた。
「その筋肉で女らしい声出すな」
「な゙!!!」
まるで獣を見たかのように言った。
体中に鳥肌が立つ。
フッと薄く笑って諒太はあたしに背を向けた。
「兄貴、今フリーだから」
って、最後に言いながら。
(誤解、されてない?)
一人残されたあたし。
チャイムが鳴り響いてようやく足を動かした。
教室に戻っても、頭と胸にモヤモヤがうごめき続ける。
(将ちゃん…フリー…なんだ)
って、(違う違う…!)