ちぐはぐ遠距離恋愛
祭開始の時間だというのに、もう結構な人の数が広い公園を埋め尽くしていた。
「相変わらず、すごいね」
「まぁ、楽しいからね」
公園の周りにズラズラと並ぶ屋台。
いろんな食べ物の匂いが混ざって鼻をさす。
「ヤキソバ、食べたいな」
「じゃあ並ぶか」
彩夏がそう言うから、あたしたちはまずヤキソバの列に並んだ。
彩夏は淡い紺地に色とりどりの花柄がついた浴衣をきている。
真白と優香子は浴衣とか可愛いものに興味はないから至って普段着だ。
でもこう見ると、浴衣姿の女子は多い。
(皆よくやるよなぁ…)
少しばかり感心しながら、ヤキソバを買い終えてあたしたちは公園の中をゆったり歩く。
同じ学校の生徒もいた。
「あ、葵先輩達だ!」
運よく、各パートの先輩も三人一緒に行動していた。
「彩ちゃん、浴衣可愛いね」
「そんなことないです…っ」
トランペットの、ゆかり先輩の言葉に照れたように笑う彩夏。
「優香子は浴衣じゃないんだ」
「ウチはそういうキャラじゃないし」
ホルンの、奈津美[なつみ]先輩。通称『なっちゃん』。
1番気が合う…というより明るくて面白くて…吹部のムードメーカー。
そんななっちゃんは浴衣で…
「すごく似合ってます」
あたしはつい感想を口にだした。