ちぐはぐ遠距離恋愛



あたしの指を追うように後ろを振り向いた先輩。

先輩に見られた女子群は、キャーキャーと黄色い声を出して喜んだ。


彩夏がそれをみて、「ほらね」と耳元でいう。

(先輩、モテるんだ)

男らしい女子のあたし。
そんなのと一緒にしちゃったら、

先輩は水戸みたいな女らしい男子になっちゃう。

そんなわけあるはずもない。


だから、先輩はあたしなんかとは違って、『万年モテ期』ってやつなんだ。



「あの、先輩!」


一年生と見られる女子が声をかけた。


「何?」


あーあ、またそんな子供っぽい笑顔で語りかけちゃって…。

(馬鹿だな。あほらしい)

手紙を差し出した女子。


「よ、読んで下さい!」


力強くそう言って、タタタっと向こうへ消えて行った。

そして次の番の子が前に出る。

その子も手紙を持っていて、同じようにサッと渡してササッと走っていく。

そんな子が続き、途中には勇気をだして…、


「好きです!」


と言った子もいた。

だけど沈黙する先輩を見て、真っ赤な顔で「へ、返事は夏休み明けでも良いですから」と投げ捨て帰っていくのも何人かいた。

ついに最後の女子が先輩の前に立つ。


何人かは数えてなかったけど、少なからず七、八人以上はいたから十人目くらいではないかな。


手紙らしき物は持っていなかった。

ポニーテールに上げた長い髪の毛。それは下ろせばあたしと同じくらいかもしれない。

ペールトーン類の薄いピンクの浴衣姿の一年生らしき女子。

今までの中で1番フンワリとした柔らかい印象で、あたしが見ても可愛らしい子だった。


「好きです…。付き合ってくれませんか?」


(あたしとはこれまた比べものにならないような子だから、どうだろうな…)


いいよ、って返事しちゃうんじゃないかな…。



正直、そう思った。





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