もう一人の花嫁……
『こちらは危険ですので早く外へ!!』
参列者達が続々と係員に誘導されチャペルから飛び出していく。
『……絵梨子……。』
呆然としてナイフを握り締め、立ちすくんでいる。
ナイフの先から、ポタッポタッと血が滴り落ちて、真っ白な床に染みを作っていた。
俺が刺されるんじゃないかと恐怖を感じる前に絵梨子は、数人の係員と警備員に取り押さえられた。
『史郎さんがいけないんだからっ!!私じゃなくて愛美を選ぶからっっ!』
髪を振り乱し暴れながら叫ぶ絵梨子。
引きずられるように連れていかれた。
既に命の灯も僅かであろう愛美をしっかりと腕に抱き、座り込んでいる俺の耳へ、聞き慣れない声がした。