若恋【完】


ソファーの端と端に座っていた仁さんとわたしの間に強い風が走って、

「りお!!」

牙を剥き出しにした奏さんが銃を片手に飛び込んできた。
その後ろから一斉にスーツ姿の男たちが雪崩れ込んでくる。

爆音に耳を塞いでソファーに丸まっていたわたしを、奏さんが狂ったかのように抱き抱えあげた。

ひゃっ!
慌てて奏さんの腕にしがみついた。
シャツの下で激しい鼓動が鳴っている。


「―――よかった無事、だった」

囁いた奏さんの声は小刻みに震えてた。
奏さんはわたしに服の乱れがないのを見て額にくちづけた。

「わたし、……ごめんなさい」

「無事なら、いい」


横を見ると仁さんが両手を広げられて、身動きができないように榊さんや一階にいた仲間に取り囲まれていた。
奏さんがわたしを抱き抱えたまま仁さんに近づく。

「仁、どういうことだ?なぜ、りおを拐った?」

説明しろ。
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