若恋【完】
罠
「榊さん、傷大丈夫ですか?」
昨日、榊さんが身を挺して庇ってくれて。
ケガをしてしまって、朝に一階に見舞いに来たときにはびっくりした。
肩を撃たれた他にも足もケガしてたんだわ。
命をかけてわたしを守ってくれたのに。たくさん傷ついてたのに動転してたとはいえ気づきもしなかったなんて。
「ご、ごめんなさい」
「このくらい平気ですよ」
笑って吊ってない方の片腕でわたしにコーヒーを入れようとしたので慌てて止めた。
「わたしがやります」
仁お兄ちゃんも昨日から榊さんのそばについているって聞いて安心してたのに、もお!
恨みがましく仁お兄ちゃんをじとーっと睨んだら、
「夕べ熱を出してたくせに今朝からジッとしてないんだよ」
って、言い訳された。
「大丈夫ですよ、このくらい」
「おい、毅。ちょっとこっちに来い」
「仁さん、なんですか?」
顔をひょいと覗かせたのはまだ若いけど榊さんの可愛がってるひとだ。
「榊が良くなるまで毅がしばらくりおの護衛につく。おい毅、挨拶しろ」
「毅です。よろしく」
年下のわたしに頭を下げなくてもいいのに、律儀に下げる。
「りおです。よろしくお願いします」