若恋【完】
「仁、頼んだぞ」
「わかってるさ」
「毅、おまえに渡すものがある。仁、部屋に用意してあるものをここに」
仁お兄ちゃんが奥の部屋から縦横40、50センチ程のアタッシュケースを持ってきた。
「毅、開けてみろ」
「はい」
「いざと言うときはこれを使え」
「…はい」
なんだろう?
わたしには見えないけどケースをわずかに開いただけですぐに閉じた。
「いただいておきます」
「そうだな」
一瞬だけ場の空気が張る。
「毅、頼むぞ」
「はい」
顔を上げた毅さんは胸を張ってなんだか凛々しい気がした。