若恋【完】
「仁お兄ちゃん、毅さん。お願い、車を出して!」
「なんですか突然?」
毅さんは遅い夕食の準備中だったけどすぐにエプロンを外してくれた。
「奏さんに会いにいきたいの」
「若になにかあったんですか?」
「わからないけど。ただ胸騒ぎがして…会社にいるっていうけど違う気がして」
不安が大きくなって、胸に当てた指をぎゅっと握りしめた。
「りおさんがひとりで動くのは危険すぎます」
「でも…」
「わかりました。車の用意をします。わたしたちが勝手に動くことはできないので榊さんの指示を仰ぎます」
そう言って、毅さんは奥の部屋へと歩いてドアを叩いた。
わたしも入り口までついて行く。
奏さんのことが気になると話すと、すぐに上着を肩に掛けて榊さんが難しい顔を出した。
「りおさん、若からは何時頃に電話があったんですか?」
「10時くらいなの。だいたい今から十分ほど前に」
すると榊さんが眉をキュッと寄せた。