若恋【完】
行きますよ。
「車を用意しろ。なるべく目立たない車だ。そうだな十台だ。すぐに出れる車も待機させておけ」
仁お兄ちゃんが緊迫した声でマイクをつかむ。
どこに繋がっていたのかわからないけど、わたしたちが外に出たときにはずらりと車が並んでいた。
「わたしはりおさんと一緒の車に乗ります。仁、いいか」
仁お兄ちゃんが頷いた。
「毅と前広はわたしの前の車に」
「一也は拓也と」
次々と指示を出してそれぞれが持ち場の車の中に消えた。
その間にも気持ちがはやる。
「龍神会の正面前に」
榊さんは静かに目を閉じて言った。
―――冬の嵐がくる