若恋【完】
仁お兄ちゃんがギロリと榊さんを睨んだけど、榊さんは柔らかく笑みをこぼしただけだった。
「りおさんには若奪還のために命をかけてもらいます」
「はい」
そんなの決まってる。
奏さんを取り戻すためならなんだってするよ?
命かけてもいいよ。
奏さんをこの手に抱き締めるためならなんだってする!
「おい、榊!!」
「若を救うにはこれしかないと」
「だからって、俺の妹を、」
「りおさんに何かあるまえにわたしが守ります」
くっ
仁お兄ちゃんが車のハンドルを拳で叩いた。
「りおさんには指一本髪ひとすじも触れさせません」
「ずいぶんな自信だな」
「自信がないとできませんよ。若を取り戻すにはこれしか手はないので」
疲れたように顔を向けた榊さんがちいさく呟くように言った。