若恋【完】
「りおさん!」
「ふたりを返して!」
ハアハア
悔しくて涙が出るのに行き場のない怒りで頭の中がめちゃくちゃ。
榊さんは後ろからわたしの手首を掴み上げて、次に手を上げないようにしている。
放してよ。
お願い、放してよ。
「…わたしに手をあげたひとはあなたが初めてです」
頬の下には唇が少し切れたのか手の甲で端を拭って、乱れた髪を直してまっすぐにわたしを見た。
「わたしに媚びを売っておこぼれにあずかろうとする女が多い中、敵地に乗り込んできてわたしを卑怯者扱いして手をあげたのはあなたが初めてです」
だから?
それがなんだって言うの?
あなたとなんか話しもしたくない。
殴ったこと後悔しない。
わたしが大事で取り戻したいのは奏さんと妹。
「返して!」