若恋【完】


「わたしは奏さんのものです。お断りします。奏さんと妹を返して」


手が震える。
わたしが断ることでどうなるのか…


「随分と強気なお嬢さんだ。実に気に入ったよ。大神奏よりわたしの方が力はある。貧乏クジをひくよりわたしの元に来た方が贅沢はできる」



「龍さん、口が過ぎます」

榊さんの声がわたしの後ろで怒りに震えていた。



「本当のことだろ」

卑下た乾いた笑いをする。


嫌い。こんな男のいいなりになるなんて考えられない。

目の前の男に榊さんの手を振り切り―――



「口が過ぎます」

わたしの手が振り下ろされる前に、男の喉笛を榊さんの右手が握り潰していた。



「こんな外道にりおさんが触れることもないです」

「榊さん!」

「榊、…おまえ」

「若を返してもらえますか?」


わたしの目の前で息が出来なくなって足掻く。額が紅くなっていく。


「二度は言いません。若を返してもらえますか?」

「さか、き」

「このまま戦争をして困るのは龍さん、あなたですよ」



< 151 / 417 >

この作品をシェア

pagetop