若恋【完】
「わたしは奏さんのものです。お断りします。奏さんと妹を返して」
手が震える。
わたしが断ることでどうなるのか…
「随分と強気なお嬢さんだ。実に気に入ったよ。大神奏よりわたしの方が力はある。貧乏クジをひくよりわたしの元に来た方が贅沢はできる」
「龍さん、口が過ぎます」
榊さんの声がわたしの後ろで怒りに震えていた。
「本当のことだろ」
卑下た乾いた笑いをする。
嫌い。こんな男のいいなりになるなんて考えられない。
目の前の男に榊さんの手を振り切り―――
「口が過ぎます」
わたしの手が振り下ろされる前に、男の喉笛を榊さんの右手が握り潰していた。
「こんな外道にりおさんが触れることもないです」
「榊さん!」
「榊、…おまえ」
「若を返してもらえますか?」
わたしの目の前で息が出来なくなって足掻く。額が紅くなっていく。
「二度は言いません。若を返してもらえますか?」
「さか、き」
「このまま戦争をして困るのは龍さん、あなたですよ」